瀬戸の浜(瀬戸ビーチ)
香川県小豆郡小豆島町坂手
施設:便所、駐車場
場所:坂手港から、徒歩で15分程のところにある。海岸線が弧を描いて広がる美しい砂浜。目の前には小島が浮かんでいます。夏には海水浴場とし利用でき、水も透明感があり綺麗な浜です。
撮影日:2015年7月30日
近隣施設:岬の分教場、24の瞳映画村、太田屋食堂、ヤノベケンジ作品ビートたけし(音)×ヤノベケンジ(立体作品)

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オオカミの恩かえし
 昔、坂手には漁師がよっけおって(多くいて)、魚もぎょうさん漁れる漁村やったんや。瀬の倉の東、瀬戸の浜に二軒の魚問屋があって、漁師たちは夜に獲った活きのええ魚を夜明けにそこに持ってきよった。その魚をこうて(買って)家々に売ってまわる人は「ザル」と呼ばれ、ザルは天秤棒の前後に平たい籠を吊るして、問屋に魚を買い出しに来よったんや。
 ある朝、一人のザルが魚を乗せた籠をかいて(担いで)大岸(おきし)の薮の上まで来た時、一匹のオオカミが魚を欲しそうに舌なめずりをして、岩の上に座っとんやと。人のいいザルは魚を一尾、オオカミに投げてやった。オオカミは喜んで魚を咥えて山に走り去ったんやと。それから毎朝そのオオカミは岩の上でザルを待ち、ザルも毎日魚を、オオカミに投げてやった。それがザルの楽しみにもなっとたんやな。
 ある日、ザルが何時もの場所に行くとオオカミが岩の上から飛び降りて来て、着物の裾に噛み付いて放さんで、ザルを山へと引っぱっていく。「どうしたんじゃ。何時もはおとなしいのに」。そのままオオカミは山の岩穴にザルを押し入れた。ほんで、外から木の枝やシバの葉で穴を隠してどっかに行ってしもた。
 間もなく「うぉー」「うぉー」と仰山のオオカミの遠吠えが聞こえてきて、それがだんだん近づいてくる。「これは、噂に聞くオオカミの千びき連れ(大群)や。」ザルはブルブルと震えて穴の中でこんもう(小さく)なっとた。やがてオオカミの群れが通り過ぎるとあのオオカミが来て、ザルを穴から出してくれて立ち去ったそうな。
 ほんに、獣でも恩をよう知っとるもんやのう。
 THE かがわ「さぬきの昔ばなし」より転載しました。
【参考文献:読みがたり 香川のむかし話 香川県国語教育研究会編 発行:日本標準】